浙江工商大学東亜研究院は、浙江工商大学下沙キャンパス内の日本文化研究楼に位置し、その前身は浙江工商大学日本文化研究所であるが、その歴史が1989年8月に発足した「杭州大学日本文化研究センター」に遡ることができる。1998年9月に杭州大学が浙江大学と併合することに従い、研究所は「浙江大学日本文化研究所」に改名した。2004年8月に、研究チームのメンバーたちが浙江工商大学に転職し、改組された研究所が「浙江工商大学日本文化研究所」となった。2011年2月、時勢に順応しようとしたため、「浙江工商大学東亜文化研究院」と改称し、2013年12月に現在の名称に改名することが許可された。
本研究院では四つの専門的研究プラットフォームを擁しており、それぞれが大学に評定される「校級重点人文研究基地」(2010年10月)、日本国際交流基金認定の「海外日本研究重点支援機構」(2006年4月)、浙江省哲学社会科学発展企画の指導グループ検定の「浙江省哲学社会科学重点研究基地」(2014年4月)、大学校内の「東アジア研究と周辺外交」コラボ・イノベーションセンター(2015年7月)である。専門的研究所として、「日本文化研究所」、「韓国学研究所」、「ブックロード研究所」が設けられている。
その以外、研究院では下部の付属機関として、研究院事務所、浙江省中日関係史学会会長機構兼事務所、中華日本学研究協会事務所、浙江省中韓経済文化交流研究会会長機構兼事務所、「杭州ふれあいの場」、梅田善美日本文化研究基金などが設立されている。また、「東アジア文物博物館」及び専門的な資料室などの研究施設が備えられている。
「浙江省哲学社会科学重点研究基地」では、基地の担当者及び学術委員会の指導のもとで仕事を展開しており、下部には「東アジア歴史文化研究センター」、「東アジア国際関係研究センター」及び「東アジア経済貿易研究センター」が設立されている。また、東アジアの政情、世論の最新情報をリアルタイムに報道し、研究するため、毎年『東亜経緯』(季刊)、などの内部刊行物を定期的に発行する。更に、基地では毎年、5つの浙江省哲学社会科学企画プロジェクト、10の基地自身によるプロジェクト及び10の大学院生プロジェクトを検定する。
「海外日本研究重点支援機構」は、日本国際交流基金の支援のもとに、毎年「研究プロジェクト」、「学術会議」、「中国大学日本歴史文化上級コース」、「研究成果出版」などの活動を行う。このような活動は12年続けて行われているため、豊かな学術資源が蓄積されている。
2014年から、日本国際交流基金は本研究院で「杭州ふれあいの場」を設置し、日本文化を勉強することに新たな学習・研究資料を提供し、また交流活動を行うことを通して杭州の市民が日本文化に対しさらなる理解することができ、中日両国の相互理解と友好関係を増進させることを旨とする。
「梅田善美日本文化研究基金」は、日本の友好人士である梅田善美、梅田節子夫婦が本研究院で設立した民間基金であり、初期の5年間に、日本歴史文化専攻の修士が日本へ行き、切実に日本文化の魅力を体験できるように支援することを目的とする。
東亜研究院では専任の研究員7名、事務人員2名、海外の専門家2名が在籍している。専任研究員チームは教授2名、副教授3名、講師2名からなり、全員博士号を持っている。兼職研究員では16名が在籍しており、その内訳日本前駐中国大使阿南惟茂が本研究院の名誉教授と授与され、韓国延世大学国学研究院院長白永瑞が本研究院韓国学研究所名誉所長と授与され、著名学者湯重南、劉江永、楊棟梁などの5名が本研究院の客員教授であり、そのほか客員研究員が10名在籍している。
2016年7月4日に米国ハーバード大学フェアバンク東アジア研究センターの元主任、「世界中国学貢献賞」を受賞したエズラ・ファイヴェル・ヴォーゲル(中国名:傅高義)教授が東亜研究院を来訪し、浙江工商大学東亜研究院の名誉院長と授与された。
東亜研究院は創立して以来、東アジア研究に力を尽くし、実り豊かな研究成果をあげ、中国国内の同種の研究機関の中では屈指の機構と言える。2016年まで、本研究院の研究員(兼職研究員を含まず)は10種類以上の大型叢書、100部以上の著作、600本以上の論文を出版した。これらの研究成果の内、半分以上が外国語で発表される。また、王勇教授の著作『中日漢籍交流史論』は、国家教育委員会第一回人文社会科学優秀成果二等賞を受賞し、王勇教授と周一良教授、厳紹璗教授との10巻の共著『中日文化交流史大系』が亜太出版協会(APPA)学術類金賞を受賞し、陳小法教授と江静教授が共著した『径山文化と中日交流』が第六回「孫平化日本学学術奨励基金」著作類三等賞を受賞し、張新朋教授の著作『敦煌写本「開蒙要訓」研究』が浙江省社会科学連合会の第八回青年社会科学優秀成果賞三等賞を受賞した。王勇教授の編集した『歴代正史日本伝考注』(5巻)2015年度国家古籍整理出版プロジェクトと承認され、40巻の『中日文化交流文庫』(2017年出版)も国務院新聞弁公室と新聞出版総署との連携した「中国文化著作翻訳出版プロジェクト」に入り、2017年9月の東京国際ブックフェアにおける主賓国の主要出版物として展示される。それと同時に、中日国交正常化45週年を記念するため、王勇教授と陳小法教授が企画した「中日文化交流写真展」は国家出版総署に承認され、2017年の東京国際ブックフェアで主賓国の重要な文化交流活動として出展される。
本研究院の研究員(兼職研究員を含まず)は、2006年以来60以上の研究課題を企画し、その内訳、8つの国家レベル課題、10以上の省部レベル課題、大型課題「域外漢籍研究」が浙江省財政から重点支援をもらい、それと同時に2011年度日本国際交流基金会からも立案、資金支援をもらった。更に、王勇教授が筆頭として申請した「東アジア筆談文献の整理と研究」という課題が2014年度国家社会科学基金重大課題と検定され、浙江工商大学国家社会科学基金重大課題の空白を埋めた。
本研究院では四名の修士指導教授がいる。それぞれの専門と募集方向は以下の通りである。
王勇(教授、専門分野:隋唐における東アジア関係):アジア・アフリカ言語文学、日本言語文化、日本語翻訳三つの専攻の院生を募集する。
陳小法(教授、専門分野:明代における東アジア関係):アジア・アフリカ言語文学、日本語翻訳二つの専攻の院生を募集する。
張新朋(教授、専門分野:東アジアの伝統文化):アジア・アフリカ言語文学専攻の院生を募集する。
金俊(副教授、専門分野:東アジア思想史):アジア・アフリカ言語文学、日本語翻訳二つの専攻の院生を募集する。
本研究院は「アジア・アフリカ言語文学」専攻の修士学位授与機関として、「日本学」、「韓国学」及び「中国学」3つの研究方向に分けて全世界に向けて学生を募集している。邱均平「2013−2014中国大学院生教育及び学科専攻評価報告」により、本研究院は修士学位授与機関として当専攻を開設する中国全国28箇所の教育機関の中で、教育水準が四つ星の評価を得、浙江工商大学校内の修士学位授与機関の中で首位を占めている。また、本研究院における大学院生全員は在学中日本、韓国へ遊学・留学することができる。
本研究院は国際学術交流活動を積極的に推進しようと注力している。現在では日本の早稲田大学、関西大学、神奈川大学、韓国のソウル市立大学校、仁荷大学校、檀国大学校、江原大学校など12の海外大学と院(所)間の相互学術交流協定を結び、日本の東京大学、京都大学、日本大学、法政大学、国際日本文化研究センター、文部科学省国文学研究資料館、韓国の延世大学校、高麗大学校、韓国学中央研究院、韓国国史編纂委員会、江原韓国学研究院、米国コロンビア大学などの大学及び研究機関と密接な学術交流を行っている。また、本研究院では研究員を不定期に海外へ派遣し、講演、考察、会議、研修などを参加させる以外、定期的に大学院生の日本、韓国への留学を派遣し、更に毎年優秀の修士学位取得者に向けて日本の大学の博士後期課程推薦入学制度を実施している。
本研究院では専属の図書資料室を有し、三万冊余りの中国語または外国語の書籍を所蔵している。中日文化交流史の書籍は本研究院における蔵書の最大の特色であり、特に『日本神道大系』などの叢書が中国国内で唯一無二の蔵書である。
2016年9月10日
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