台湾総統選―対中安定を選んだ民意 |
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来源:《朝日新闻》1月16日“社论”
发布日期:2012-01-18 阅读:次) |
中国との交流拡大はよいが、手放しでは歓迎できない――。
台湾の総統選で、国民党の馬英九(マー・インチウ)総統が民進党の蔡英文(ツァイ・インウェン)主席らを退けた。示された民意をつづめて言えばこうではないか。
中台関係は民進党の前政権期に悪化した。馬氏は改善を掲げて4年前の総統選に初当選し、定期直行便を運航、中国からの観光客受け入れを解禁し、自由貿易圏を目指す経済協力枠組み協定を結んだ。
土砂降りの雨に打たれながら勝利を宣言した馬総統は、中国との経済、貿易が拡大したことが「支持された」と強調して、「今後4年間もこの政策を続けていく」と明言した。
確かに、このところの中台関係は活発だ。大陸からの観光客数は日本を上回り、留学生も来始めている。総統選の期間に中国がミサイル演習で威嚇した16年前から想像できないほどだ。
しかし、台湾に照準を合わせた弾道ミサイルを中国は配備したままだし、台湾周辺での海軍力も増強している。中台関係の安定はガラス細工のようにもろく、真の平和にほど遠い。
だから、馬総統が選挙戦で中国との平和協定を口にした途端に支持率が下がったように、統一に対する台湾の人々の警戒心はなお根強い。
中国共産党と政府は、馬氏再選が決まった後に「関係の平和的発展の新しい局面をさらに開き、中華民族の偉大な復興のために共に力を尽くすことを願っている」という異例の談話を発表し、統一を視野に入れた政治対話に意欲を示した。
しかし、台湾の民意は政治対話をまだ望んでいない。馬氏は慎重に対応すべきである。
中国も政治対話を望むのであれば、台湾向けのミサイルを廃棄するなどの誠意を示して、平和な環境を整える必要がある。秋の党大会で生まれる新しい指導部にそれを強く望みたい。
蔡氏は前回の民進党候補より得票率を上げたが、対中関係や格差、雇用などの問題で具体的な対抗策を示すことはできなかった。とはいえ、過去のような対立をあおる選挙運動はせず、台湾の民主主義の成熟を印象づけたことは評価したい。
民主的な選挙に縁のない中国の人々もネットなどで大きな関心を示した。台湾を通してさらに学ぶようになればいい。
台湾は日本と外交関係はないが、東日本大震災で世界一の額の義援金170億円を寄せたように、極めて親日的である。日本は自由貿易協定を結ぶなど関係の強化をはかり、台湾の善意にこたえなければならない。
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